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西洋中世舞台RPGが人気な理由

デカルトからベイトソンヘ世界の再魔術化』のモリス・バーマンは、以上に示したような事態(ウェーバーの言う「脱魔術化」のプロセス)を一言で「参加しない意識」と要約してみせている。バーマンは、科学革命前夜までの西洋世界を「魔法にかかった世界」(enchanted world) と呼ぶ。そこでは、(近代以降の)醒めた意識が見据えるのとは異質の、不思議な生命力をたたえた世界への畏怖と共感があった。人間は疎外された観察者ではなく、宇宙の一部として直接参加する存在だった。個人=ミクロコスモスと宇宙=マクロコスモスとが互いに照応し合い、この結びつきが生に豊かな「意味」を与えた。バーマンは、このような意識のあり方を「参加する意識」と呼んでいる。
バーマンに従えば、近代化とは、この生にとって根源的な役割を果たしていた「意味」の喪失のプロセスに他ならない。それは言い換えれば、世界から「魔法」が解けていくということを意味する。たとえば、デカルトに端を発する機械論的哲学は、精神と物体を明確に分断する思考法を推し進めた。主体と客体を常に対立させる二元論的思考は、自然への参入ではなく、自然との分離に向かう意識、すなわち「参加しない意識」を生み出した。無意味な世界のなかで、内面的に孤立化した諸個人が暮らしているのが私たちが生きる近代社会のあり方なのだ。
(木澤佐登志『失われた未来を求めて』(大和書房 2022年))

 
この木澤さんの文章を読んで、なぜドラクエやFFなどの西洋中世RPGが人気があるのかわかった気がする。
内面的に孤立化した諸個人が暮らしている近代社会の中で、
まだ、個人と宇宙が照応し合あっていた、「魔法」が解けていない世界を希求している。
そういう世界に飢えている。
部屋に引きこもってゲームやっていたら逆効果なのだけど、
まさにクソ社会・冷凍都市たる現実から逃避するのも仕方がない。